かめこ
うさみ
地元群馬県前橋市と東京を舞台にした7人の友情を描いた作品。高校卒業後、3年、5年、10年と時間が経過する中でそれぞれが直面する理想と現実、そしてラストでは“真の友情”を確認します。
最後はどうなる?『青の帰り道』の結末
とにかく、結末だけ知りたい人のためにお話すると、
ラストは非常に現実的な終わり方です。
登場人物それぞれが色々なことを乗り越えてのラストなので、結末としてはそれしかないな、そうなるべきだよねという感想を持つ人が多いのではないでしょうか。
映画タイトルの『青の帰り道』とは劇中、登場人物のタツオがカナのために作った曲タイトル“青の帰り道”から取っています。
物語のあらすじや感想について、時間がある方はこのまま読み進めて下さい。
キャスト
- カナ(真野恵里菜)・・・歌手を目指して上京する
- タツオ(森永悠希)・・・カナとユニットを組んでいた。上京を目指し大学受験するが失敗
- キリ(清水くるみ)・・・カナのマネージャー。写真が好き
- リョウ(横浜流星)・・・リーダー的存在。現場作業員→上京し、詐欺や夜のお店で働く
- コウタ(戸塚純貴)・・・地元で現場作業員として真面目に働く。マリコと結婚し子供ができる
- マリコ(秋月三佳)・・・コウタの彼女→妻→子育てをしている
- ユウキ(冨田佳輔)・・・上京して進学→保険会社の営業マンとして働く
- 冴子 (工藤夕貴)・・・キリの母。水商売をしている
- シゲオ(平田満)・・・タツオの父。開業医
- 橘 (山中崇)・・・カナとキリの芸能事務所の上司
- セイジ(淵上泰史)・・・キリの彼氏。結婚詐欺師、DVなどひどい。
- 工場長(嶋田久作)・・・リョウとコウタが働く建設現場の上司
- マキ (早乙女ゆう)・・・
スタッフ
- 監督 藤井道人
- 原案 おかもとまり
- 脚本 藤井道人、アベラヒデノブ
- 音楽 岩本裕司
- 主題歌 amazarashi「たられば」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
- プロデューサー 伊藤主税、岩崎雅公
- キャスティング 伊藤尚哉
- ラインプロデューサー 角田道明、天野恵子
- 撮影 石塚将巳
- 照明 阿部良平
- 編集 古川達馬
- 録音 岡本立洋
- 美術 横張聡
- スタイリスト 松田稜平
- ヘアメイク 細野裕之
- 宣伝協力 MUSA
- 配給 NexTone
- 配給協力 ティ・ジョイ
- 制作プロダクション and pictures
- 制作協力 BABEL LABEL、プラスディー
あらすじ
2008年地元、群馬県前橋市の高校に通う7人は学校の帰り道、自転車に乗りながらそれぞれ卒業後の進路、将来について語っています。
高校時代カナはタツオと音楽ユニットを組んでいました。
みんなタツオが作る楽曲とカナの歌が大好きでした。
タツオは受験に失敗し浪人していますが、早く合格して上京しまたカナと一緒に音楽が出来ることを望んでいます。
キリはカナのマネージャーとしてサポートを、リョウとコウタは建設現場で働き、マリコはコウタと結婚、ユウキは東京で進学とそれぞれ順調な人生を歩み始めました。
しかし、暫くするとそれぞれ壁にぶち当たります。
理想と現実との乖離(かいり=離れてしまうこと)、
やりたくない仕事をしたり、犯罪に手を貸してしまったり、人間関係に悩んだり、苦しんでいます。
卒業して3年が経ち、タツオは受験を止めていました。
カナも芸能界にいますが歌の仕事ができず不本意な仕事をしています。
そしてタツオは自らの命を絶ってしまいます。
久しぶりにタツオのお葬式にみんな集まりますが、それぞれの人間関係も悪くなっていました。
やがてカナも自暴自棄になりマネージャーだったキリともうまく行かなくなり孤独になります。
卒業後5年が経ちます。
みんな口には出しませんが、今でもずっと心の中ではタツオのことが気になっています。
カナはお酒にもおぼれ廃人のような生活を送るようになってしまいます。
しかし、リョウによって一命をとりとめます。
2018年。
高校卒業後10年が経ち、みんなやっとまともな生活を取り戻しました。
地元の帰省し、タツオのお墓参りに行ったところで物語は終わります。
リョウ役!横浜流星の見どころ
- ヤンチャな不良!オラオラ系男子
- 取り残されたことへの焦燥感・苛立ちを抱える
- 友情を大切にする熱いリーダー的存在
ヤンチャな不良!オラオラ系男子
数多くの学生役を演じている流星さんですが、その中でも『青の帰り道』のリョウは他の作品には無いヤンチャオラオラ系男子です。
“田舎の不良”という表現が一番近いかもしれません。
高校生なのに下校中にタバコを吸っていたり、服をだらしくなく着崩したり、自転車の乗り方、足の開き方、元気だけどガサツな話し方など。
成長して大人になってからもちょっと怖いお兄さんの風格があります。
リョウは裏社会でそれなりに成功しているので、そういう感じが流星さんのお芝居で伝わります。
取り残されたことへの焦燥感・苛立ちを抱え一発逆転を狙う
上京したカナが芸能界で活躍したり、同じ職場で働くコウタが家庭を持つなど
周りの友人たちが順風満帆に見えたリョウは自分が“負け組”なことに対するに焦り、苛立ちを抱えます。
しかし、でっかいことをして成功する!と一発逆転を狙い夢は語るけど具体的なビジョンはありません。
体力と勢いはあるけど、自分自身あまり頭が良くないことは分かってるから、どうすればいいのか悩んでいるんですよね。
そういうリョウの自分に内に向けたもどかしさと外に対する苛立ちが流星さんのお芝居から、ひしひしと伝わってきます。
そして悪い先輩の影響で、よく分からないまま悪い道に進んでしまう一種の“純粋さ”。
リョウは根っからのワルではありません。
演じているのを忘れてしまうくらい流星さんがリョウの人生を生きているので、ずっと引き込まれます。
友情を大切にする熱いリーダー的存在
リョウはグループの中で最も不良なのですが、一方、友情を大切にするタイプでもあります。
みんなの前では口には出さないけど、色々なシーンでそれがわかります。
例えば、リョウは先輩に「ライブハウス作りたい」と自身の目標を語っていますが、これは以前カナが冗談交じりで「リョウがライブハウス買ってくれれば毎日歌えるのにな」と言ったことが元です。
リョウはオレオレ詐欺という仕事をしながらも、本気でカナのためにライブハウスを作りたいと思っているんですね。
またタツオのお葬式でコウタと取っ組み合いのケンカをしてしまったのも、本心では大切な友人を失った悲しみが大きかったからす。
高校を卒業して5年後にリョウとユウキが居酒屋で飲んでいるシーンがあります。
ユウキは保険の営業マンをしていますが、あまり契約が取れていないのを察したリョウは、「聞いてもよく分からないから」と契約書を見ずに加入してあげようとします。
この時、ユウキはタツオの話をします。
しかし、リョウは「逃げやがった奴」「いくらきれいごとを言っても死んだら終わり」「生きていくしかないだろ」などと冷たい言葉を発します。
結局、怒って帰ってしまうのですが実はリョウもずっとタツオのことは気になっているんですよね。
そしてリョウはカナを何度も助けます。
アル中になりクスリにも手を出してしまっているカナを止め、説教をします。
命を救ったり、カナの元上司を殴ったりと手荒ですが友達の為なら、自己犠牲も厭わない真っすぐな奴なんです。
記憶の残る横浜流星さんのお芝居シーン
- 喫煙
- 悪に手を染める
- 2018年、地元の帰省
喫煙
爽やかな役が多く、喫煙シーンもほとんどない流星さんですが、今作のリョウ役では喫煙シーンが多いです。
冒頭ではまだ高校生ですが、自転車に乗りながら片手タバコ、咥えたばこで運転しています。
ここの制服で喫煙しているシーンでリョウのキャラクターが好きになる人も多いのではないでしょうか。
悪い先輩たちと一緒に話している時もタバコを吸っていたりするんですが、路上喫煙を注意されたときは大人しく従うんですよね。
この素直な感じ、ギャップ萌えです。
そして先程も紹介した、高校を卒業して5年後にリョウとユウキが居酒屋で飲んでいるシーンでは、タバコの吸い方も大人になっています。
すっごい細かいことなんですが、高校生の頃や卒業すぐの頃はせわしない吸い方です。
しかし、羽振りが良くなり成長すると、タバコも落ち着きのある吸い方に変わっています。
きっと時間の経過に合わせたお芝居なんだと思いますが、意識してやっているのか、リョウに成りきれば自然と仕草までそうなるのか、神秘です。
ちなみに流星さんが喫煙者かどうかについては微妙です。
実際に直接見たり聞いたりしたことがないので真実は分かりませんが、一応ネット上では両方の情報があります。
悪に手を染める
流星さん演じるリョウは地元の先輩にそそのかされて、窃盗に加担してしまいます。
その後、別の先輩の元でもオレオレ詐欺をやってしまうんです。
あの高潔な横浜流星さんと同一人物とは思えないほど、悪人を演じているんですよね。
リョウのセリフの中に「見返してやんぞ、全員」というのがあります。
でも別に周りの友人たちはリョウを見下しているわけではないんです。
しかし、自分が“下”にいることが悔しんですよね。
その悔しさの表情や焦りから来るギラギラしたヤバいテンションの流星さんのお芝居も注目です。
2018年、地元に帰省
流星さん、いや、リョウがめちゃくちゃ短髪になってます(笑)
2018年の夏、地元に帰って来たリョウはどこか落ち着いているというか、それなりに充実した生活が送れているんだろうなというのが流星さんのお芝居から伝わってきます。
凄いなぁと思うのは、2008年→3年後→5年後→10年後のリョウは全部違うんですよね。
その年に相応したリョウを演じているんです。
例えば2008年のリョウは現役男子高校生なので、子供っぽさが残っています。
しかし、10年後のリョウは“昔ヤンチャだった人”という印象なんです。
落ち着いた大人ではなく、“元ヤン”感を表現しています。
実際に演技をしてみると分かるのですが、自分自身と全く違うキャラクターを演じるのって本当に難しいと思います。
“カメレオン”俳優とか“憑依型”いう言葉があります。
松山ケンイチさんや菅田将暉さん等がそれに当たりますが、間違いなく横浜流星さんも当てはまります。
流星群の私が観た!『青の帰り道』の感想
結論から先にいうと、私は苦手なんです。すみません。
おそらく多くのファンの方からすると、「え!流星群なのに!?許せない!!!」と思われるはずです。
なぜ私があまり好きではないのかというと、ストーリーのトーンが全体的に暗いからです。
“現実的青春作品”でして同じ青春物でも『兄友』とか『虹色デイズ』のような非現実的なとびきり明るい作品が好きな私にとって少々、心がしんどいのです。
そしてなによりもですね、手首を切るシーンの描写が生々しくて私は目を細めちゃんですよね。痛々しくて。
これは流星群の中でもグロい描写が多いドラマ『あなたの番です』が苦手な方がいるのと同じかと思います。
で、じゃぁそれを抜きにして感想を言いますと、
この作品が言いたいことは“友情とか支え合うことの大切さ”だと私は思っています。
理想と現実の乖離があっても帰れる場所があれば良い。
おそらく同じような経験をした人はかなり共感できる作品なのではないでしょうか。
というのは『青の帰り道』はカナとタツオを軸にしていますが、ジャンルとしては群像劇なので、登場人物それぞれの人生と自分を重ね合わせることができるからです。
※群像劇・・・主人公を中心に脇役を描くのではなく、登場人物それぞれに焦点を当てるストーリー
ですので、とてもリアリティがあります。
映画の中では、なぜタツオは死を選んでしまったのか?原因は分からないと言ってますが、分かる人は多いと思います。
(ユウキはリョウタにタツオが死んでから2年後、今なら分かるような気がすると言ってます)
結果としてタツオがみんなを助けた、昔のような仲の良い関係に取り戻してくれたわけですが、タツオも素直にみんなを頼って欲しかったですよね。
カナも偶然リョウに発見されて一命を取り留めましたが、出来ればあのようになる前に相談してほしかったのにと思います。
だからこそ、友人は大切ですし例え友人が居なくても誰か頼れる人、支えてくれる人がいるべきです。
自分は存在価値がない人間なのでは?って思っているのは案外自分だけだったりします。
キリの場合は、どうしようもないと嫌っていた母冴子が実は自分のことをずっと支えてくれていた存在でしたね。
親の愛情でした。
「人生に正解なんて無いと思うんだ」
「5年もさ、頑張って来たんじゃない東京で」
「自分の人生なんだから、自身持ちな!」
工藤夕貴さん演じる冴子のキリにかける言葉、素敵です。
大人になると、しっかりしなきゃ!誰にも頼らず自立しなきゃ!という思いになりますが、立場によっては甘えるべきときは甘えて良いんだぁと思わせてくれます。
“私には帰るべき場所があるんだ”ってこれは流星さんが出演した映画『きみの瞳が問いかけている』で主人公の明香里が言っていた台詞ですが、まさにその通りだと思いました。
>>横浜流星ファン目線!『きみの瞳が問いかけている』感想・あらすじ
人間、一人では生きていけないです。親や友人など自分を支えてくれる人がいて生かされています。
カナ、タツオ、キリ、リョウ、コウタ、マリコ、ユウキ、7人それぞれ全く違う人生を選びましたが、10年を経て改めて絆を確認し合え良かったなぁと思いました。
流星群が流星群初心者に『青の帰り道』を勧める理由
- 流星さんがおすすめしている
- 公開に至るまでの経緯と深い思い入れ
- 藤井道人監督と流星さんの絆
流星さんがおすすめしている
横浜流星さんの写真集『流跡』のインタビューの中で、ご本人が『青の帰り道』を一番のおすすめ作品として挙げています。
なので、間違いないです(笑)
おそらくこの後に説明しますが、制作側として作品への特別な思い入れがあるんだと思います。
公開に至るまでの経緯と深い思い入れ
ググると分かるので、ここではあまり詳しくは説明しませんが、当初この映画の公開は2017年予定でした。
しかし、2016年にコウタ役の高畑裕太さんが逮捕されてしまったため、撮影が中断したんです。
すでに全体の7割ほど撮影が終了しており、藤井監督は相当落ち込んだという旨をインタビューでお話されています。
映画自体お蔵入りの可能性も十分あったのですが、2017年にコウタ役に戸塚純貴さんを迎え、キャストとスタッフの皆さんが再集結して撮り直しました。
私たちファンも流星さんがキャスティングされたときから公開を心待ちにしていたため、事件により撮影が中断したと知った時はショックでした。
なので再撮影という選択をした監督やスタッフ、キャストの皆さんのこの作品に対する深い思い入れに共感した人も多いと思います。
長い道のりを経て公開されたことへの感動、賞賛の気持ちが強いです。
藤井道人監督と流星さんの絆
これはファンの間では周知の事実ですが、藤井道人監督と横浜流星さんの絆は深いです。
お互いを信頼されていて、藤井監督は例えるなら“兄弟”のような感覚だともインタビューで述べられています。
出会いは2016年公開映画『全員、片想い「嘘つきの恋」』の打ち上げの席です。
『全員、片想い』は短編映画を1つに集めたアンソロジー映画というものなんですが、藤井監督が手掛けた「嘘つきの恋」に流星さんが出演したわけではないんですよね。
ちなみに出ていたのは志尊淳さんです。
で、流星さんは『全員、片想い』の中の別の作品「イブの贈り物」に出演しています。
>>横浜流星出演!『全員、片想い』の「イブの贈り物」感想・あらすじ
この『全員、片想い』の打ち上げでの出会いをきっかけに、『青の帰り道』で本格的に監督と役者の立場でお仕事をされました。
その後、2021年公開映画『DIVOC-12「名もなき一遍・アンナ」』や2022年予定Netflixドラマ「新聞記者」と藤井監督の作品に出演されています。
横浜流星を知るなら藤井監督の作品は絶対に見ておく必要があるので、最低限、流星さんが出演されている作品はチェックしておくと良いですよ。